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    #エスデュ版深夜の文字書き一本勝負
    お題『KOMA』
    ワンライ、画像投稿がセンシティブ判定になってしまうのでこちらで失礼します。
    いちゃいちゃしながらコマ練習するふたりに胸やけするルムメの話です。
    捏造ルムメ目線。えすでゅちゃんはいつでもバグ距離感。

    エスデュ版深夜の文字書き一本勝負お題「KOMA」 『亜熱帯で胸やけ』 賢者の島は寒い。秋の終わりから予感はしていたが、ウィンターホリデーともなるとより一層実感する。雪国出身のやつ以外は大体同意見で、外を行きかう際は皆気持ち速足になる。俺とルームメイトも寮に入った瞬間、その温かさにホッと一息をついた。
    「いやー、やっぱ中は快適だわ」
    「温度差で鼻出そう」
    「わかる」
     ようやく慣れてきた癖の強い曲がりくねる寮の廊下も、今は温かいだけでありがたい。男子校とはいえプライドがあるので垂らすまいとすすられていた鼻水は、けれども自室の扉を開けた瞬間勢いよく飛び出した。
    「おー、おか」
     えり、を聞かずに扉を閉めた。振り返れば、おそらく隙間から同じ景色を見たルームメイトが、俺と同じく間抜けに鼻水を垂らしていた。
    「は?うちの部屋だけ温度高くね?」
    「異常気象だよな。寮長に言って部屋変えてもらうか」
    「いいな。そうしよう」
     そんな冗談を言い合ったって、退学者の少ないうちの寮でそんなささやか且つ切実な願いが叶えられないことはないとわかっている。せーのを言わずともふたり同時にため息をついた。互いに購買部のセールで買ったあれそれや、図書館で借りた本をそこそこ抱えている。自室に帰るほかないのだ、残るふたりのルームメイトにより亜熱帯にされている自室に。
    「あれは、仔ハリネズミだ」
    「それかフラミンゴのひなだ」
     うん、と頷き合って再度扉を開ければ、先程と全く同じ光景が広がっている。
    「いや、帰ってきたと思ったら何してんの」
    (それはこっちのセリフだし)
    「ふたりとも、鼻水出てるぞ。寒かったか」
    (鼻水はお前らのせいだし)
     亜熱帯の原因である俺達のルームメイト、エースとデュースが、エースのベッドでふたりぴったりくっついて何かをしている。入学早々問題を起こしたり、寮長にケンカを売ったり、ふたりでしょっちゅうケンカをしている。そして大体いつも一緒にいて、バグッた距離感でぴったりくっついたり一緒に寝落ちしたりしては、周りの人間達の胸やけの原因となっている。
     エースは明らかに周囲の反応にも気付いていて、わざとやっている。デュースは何にも気付いちゃいない。エース以外の誰かが同じ距離感で接するとぎょっとしているのに。ちなみにそういう事をする誰かは、大体後にひっそりとエースに牽制されているらしい。
    「そこのステンレスポットに紅茶入ってっから、好きに飲んでいーよ」
    「おー、ありがと…」
     それでいて気のいいところがあるから、強くも言えない。ベッドに座るふたり、エースがデュースを後ろから抱きかかえるようにして、手元を動かしている。
    「んだから、こんくらい」
    「なるほどな…」
    「KOMA練習してんの?」
     ともに帰ってきたルームメイトが、鼻をかんだあとふたりに聞いた。俺も荷物を置いてステンレスポットから自分のカップに紅茶を淹れつつ、いちゃいちゃの原因を見やる。
    「ああ。僕、紐を巻く時、ぐちゃってなってしまうことが多くって」
    「デュース力入れすぎて失敗ばっかして、しょーがねーから教えてやってんの」
    「しょーがねーからって、僕、頼んでねえ」
     デュースはぷっくり頬を膨らませて、もう一度自分だけでKOMAに紐を巻きつけようとして失敗しては、嬉しそうなエースに直されている。
     購買部、サムさんの店ではニューイヤーセールをやっていて、そこでトレイ副寮長達バイト店員と、東方のKOMAというオモチャでバトルができるというイベントをしている。セール開始後すぐにリドル寮長も挑戦し、ケイト先輩のマジカメ投稿からハーツラビュル寮内で話題になった。少し経った後からはトレイ副寮長らからコツを教わることもできるようになり、ますます盛り上がっている。俺達もさっき挑戦したがあっさり負けてきたところだ。
     ハーツラビュル寮は普段談話室で遊ぶのはトランプゲームが主だけれど、今はちょっとしたKOMAブームがきている。次の週末にはトレイ副寮長が東方の材料を使ったお菓子を賭けた、寮部屋対抗戦のKOMAバトル大会が開催される。ふたり一組なので、うちの部屋からは勿論エーデュースが出る。デュースが出たいといったので、デュースとペアを組みたいなんて大それたこと言えるわけがない。それにエースはこの部屋でなく一年生達の中でも器用さはトップなので、任せた方が勝率は高い。
     だから、KOMAの練習とか言いながらいちゃいちゃしたいだけだろとか言えないわけだ。エースはそれをいいことに、昨日は投げるフォームがどうたらとか言いながらデュースにぴったりくっついていた。俺達はお菓子を食べる前から、食べ放題に行った後のような胸やけ感に襲われているわけだ。
    「ほら、もっかいやってみ」
    「ん…こんな感じか」
    「いんじゃね。投げてみなよ」
     デュースが投げたコマは綺麗に回る。「やった!うまくいった!」へにゃへにゃ笑ったデュースは何も考えずエースに飛びついて、エースはニマニマしながら「昨日よりいんじゃね」とかなんとかのたまっている。
     確かにデュースは日々成長しているもんだから、エースのベタベタ指導は間違っていないわけだ。俺達はデュースが寝静まった後、エースがKOMAの回し方を研究していたり動画を探してはわりと真剣に見ている姿を知っているけれど、まあそれはもっと重要な何かの時のためにとっておこうとデュースには言わないでいる。
    「なあ、ふたりとも。週末のKOMA大会は絶対優勝するからな!楽しみにしていてくれ」
    「おー、頼むわ」
     デュースが邪気ゼロで微笑んでくる。エースが器用だからではなく、デュースが日々成長しているからではなく、このふたりのいちゃいちゃバグ距離感を見せつけられた相手の手元が狂って、優勝できるんじゃないかとわりと本気で思う。
    「とりま、週末までのガマンだ」
    「いや、次は次で、また別の何かを見つけておんなじことが繰り返されるだろうよ」
    「…まあ、そーでしょーね」
     投げ方の角度は~なんて言いながら、またベタベタくっついているふたりを見つつ、俺とルームメイトは小声でささやき合った。寮の部屋の温度は快適なはずなのに、ステレンスポットの紅茶はスッキリさせる効果があるブレンドらしいのに、やはり亜熱帯の中胸やけを起こしている。
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