小さな僕との攻防戦「いっだ!噛んだ!こいつ噛んだけど!?」
ぎゃんぎゃんと叫ぶ高杉の声に導かれるようにマスターに渡されたリヨの入るケージへと雅子も近づいた。
「そんなに騒いで…どうしたというのです?」
「雅!そいつに近づくんじゃない!噛まれるぞ!」
「かま…?」
きょとんと首を傾げる雅子だったがリヨは一向に姿を現さない。不思議に思っているとは対高杉とは打って変わり、もじもじとした様子でリヨは両手を後ろに回し現れた。
「あら?」
トコトコと歩き雅子の前までやってくると後ろに隠していたものを前へ、雅子へと向けるリヨ。それは小さな花だった。可憐な、小さな花。
「…これを私に?」
こくこくと顔を赤くしながら頷くリヨに雅子は花が綻ぶような笑みを浮かべた。
「ありがとう、小さな晋様」
途端、ぶわりとさらにリヨは顔を赤く染めそして雅子に近づいた。ぴょんぴょんと飛び跳ねる様子から上へと行きたいのだろうと認識した雅子は手でお椀を作りその上にリヨはよじ登り上へと向かう。そしてリヨは持っていた花を一生懸命雅子の頭につけた。
「!…似合いますか?」
強く頷くリヨにパッと雅子は笑う。心底、嬉しくてたまらないと言う笑顔でーー、
一方、蚊帳の外にされた高杉は歯軋りをしていた。リヨもまた小さな自分であることからわかっていたつもりだった。同じ高杉晋作であるということは同じように雅子を愛していることを。そしてきっとそれはライバルとなり得るということを
(許しておくべきかーー…)
そう思い立つと高杉は立ち上がり後ろから雅子を抱きしめる。
「きゃあっ!?し、晋作…?」
「いやなに、妬けるじゃないか」
一体何を?と雅子が問う前に唇を奪う高杉。勿論、雅子の手の中でリヨは怒り叫び、そして次の瞬間また同じように噛まれてしまう高杉だったーー。
-Fin-