諍いとお茶会 「シルフィールってなんでも似合いそうよね。その白いリボンもよく似合ってるけど…他のも、どんな服も似合いそう」
「そんな…プリンセスにそう言ってもらえるなんて光栄です」
そう言ってシルフィールは頬を染め、思い出したようにテーブルの前に広げたお菓子のうちの一つ、マカロンを手に取った。
「はい、プリンセス」
「…食べさせてくれるの?」
「ええ。…はしたない、とか言いますか?」
「ううん、言わない!言わない!」
そう言ってアリシアはシルフィールが手を引っ込めるより先に口をあける。
「ふふ、はい。プリンセス、あ~ん」
「ん!おいしい!」
「ありがとうございます、わたくしもここのお店はお気に入りで…」
「じゃあ、私も食べさせてあげる!何がいい?」
「ええっ…そんな、いいのですか?」
「私がいいって言ってるからいいのよ!ほら、選んで選んで」
「では…」
言われシルフィールは違う色のマカロンを選びそれをアリシアは手に取るとシルフィールの口へと運んだ。
「…美味しい?」
「はい!」
嬉しそうに笑うシルフィールにアリシアは目を細める。そして次は何を食べさせようか、なんて考えて視線を移すと目の前のシルフィールが顔を顰めその視線はアリシアとは別のところに向けられていることに気づきそちらへと振り向く。
「リューク!」
「こんにちは、プリンセス。今日は…シルフィールとご一緒なのですね」
「そうよ。プリンセスはわたくしとお茶会中。ですよね?プリンセス」
にこにこと笑うシルフィール。けれどそれは普段見るような笑顔ではなくリュークに対して拒絶を表しているかのような笑顔だった。
「…シルフィール、」
「何かしら?リューク」
「いや……俺は……」
何か言おうとして口を噤む。それはシルフィールがアリシアの心を掴んでいることへの嫉妬であり、言うことのできないけれど多弁な瞳のせいだった。
「???」
その様子に、挟まれたアリシアは訳が分からず首を傾げた。普段と様子が違うのは分かる。ただ理由が分からず何度も首を傾げた。
「えっと…リュークも一緒に食べる?」
「え!」
「ぷ、プリンセス!?」
驚き、嬉しがるリュークとは反対にシルフィールは抗議するような声を上げた。
「あ、シルフィールが持ってきたお菓子だし…悪かった?」
「い、いえ…そんなことはなくて………お邪魔虫」
小さく、リュークにしか聞こえないような声で呟くシルフィール。それに冷や汗をかくリューク。しかしシルフィールはアリシアに名前を呼ばれ彼女にだけ向けられる笑みを浮かべる。
そしてアリシアは二人の小競り合いに気づかないままお茶会のひとときを楽しむのだった――。
-Fin-