好きの一つも口にできない唐変木に対するレンジャー長の有難いお説教アムリタ学院にはかつてこのような言い伝えがあった。ティナリを本気で怒らせたら生きたまま標本にされるのだ、と。勿論本当に磔にされるのではなく、言葉の針で串刺しにされることの比喩である。ちなみにその言い伝えは、アビディアの森のレンジャーの間に定着しているのだとか。
アルハイゼンは、膝を畳んだ状態で床に座らされていた。正座、という稲妻の伝統的な反省の姿勢だそうだ。アルハイゼンの目の前で両腕を組み、仁王立ちしているのはティナリ、その後ろにセノ。更に後方にはカーヴェがクッションを抱きしめソファに座っていた。
「アルハイゼン、まさか君にお説教をする日が来るとは思わなかったな」
「奇遇だな、俺もだ」
「繰り返すけど僕の話が終わって納得するまでこの書類は渡せないからね?」
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