ココイヌ『シンプルキス』 放課後になると校門の前で[[rb:RZ350 > ナナハンキラー]]にまたがった乾が待っているのはいつものことだ。
しかし今日の彼はくたびれた青いスウェットのセットアップを着ていたから、九井は驚いて目を瞬かせた。
二月に入ったばかりの冬真っただ中である。周囲では学生たちが寒風に首を竦めて下校しているのに、乾は部屋着同然の恰好でヘルメットを抱えたままぼぅっと空を見上げていた。グローブとブーツは身に着けているものの、外には何も防寒していないから細い首と刈り上げた襟足は丸見えだ。
その寒々しい恰好に、九井はブレザーの上に巻いたストールの中で嘆息する。風邪ひくっつーの、と胸中で呟きながら彼のもとへと歩いて行った。
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