【呪】猫と五+棘 二月とは思えないくらい、暖かな日差しが注ぐ日だった。歩いているとうっすら背中が汗ばんできたので、もこもこのダウンジャケットは途中で脱いでしまった。ひやりとした空気が愛用のネックウォーマーの隙間から入り込んできて気持ちがいい。こんな日はきっと、"彼"がいる。
狗巻棘は、"彼"を探して陽当たりの良い中庭を歩いた。地面はまだ冷たいから、恐らくベンチの上や芝生が綺麗に生えているところにいる。風が当たらないこともポイントだ。普段は学生たちが修行や鍛錬に使うことも多い中庭だが、今日は皆任務や外出で出払っていて人気がなかった。棘もよく修行の休憩中に腰掛けるベンチの上に、"彼"はいた。
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