気になるふたり突然ですが、私は所謂腐女子。そしてJKです。
そんなことは本当にどうでもよくって、とにかく今私は話したいことがあります。
私のクラスにいる、幼馴染でいつも行動を共にしているふたりの男子のことです。
このふたりはあまりにも一緒にいるため、他のクラスの子たちにすら完全にニコイチとして認識されています。
進学校なこともあってか、私の周りにはそういったことを知らない純粋でプラトニックな子が多いので、限りなく仲の良い男友達として認識されていますが、わたしの判定では。
この二人、間違いなく付き合っています。
しかし私は困っているのです。
なぜなら、証拠が今ひとつ掴みきれないから。
お、という距離感になったときには必ずどちらかが少し身を引くのです。
そんなことまでよく気がつくな、って?
まあ、四六時中観察していますから。
そんな調子なので、もしや両片想いなのか?と疑うこともありました。
でも違うのです。見つめ合う眼差しには、確かな愛と信頼が見えるのです。
今日もまたそんなことを考えながら、通っている高校からは少し遠いショッピングモールで買い物をしにきました。ここには驚くほど広いBLコーナーを持つ書店があります。
今日は、気になってた大好きな先生のあの新シリーズと、お馴染みの漫画の最新刊の、…と考えたところで、私はふと立ち止まりました。
50mほど先に見間違えるはずのない、あのふたりの姿が見えたから。
私はこのときばかりは要らないと思っていた2.0の視力に感謝しながら、近くの大きな柱に隠れました。
ふたりはこちら側にある書店に向かって歩いてきます。
そのとき、私はあることに気が付き、声にならない叫びをあげました。
恋人繋ぎ、してる………。
わ、わ、わ、と叫び出したい心を必死に抑えながらもやっと見つけた証拠に心躍り、思わず身を乗り出して見てしまったその時、
目が合いました。大人しく見えるけれど、その目には底のない愛を宿している、紫の髪の彼と。
なぜだかその目に見据えられると慌てることもできず、私はただじっと見つめ返しました。
すると彼は、ふ、とにっこりわらって、こちらにだけわかるようにしー、というジェスチャーを寄こしてくれました。
やっぱり、やっぱり、やっぱり!!!
私は絶対に口外はしない、という強い意志だけが伝わるようにひしと一度だけ頷き、くるっと半回転して走り出しました。
買いたかった新刊やあれやこれやのことはもう、すっかり頭から抜け落ちていました。
そのままの勢いで、タイミングぴったりやってきた電車に乗り込み、席に座った私はそこでようやく一息つきました。
足先から全身に染みていくようなこの感覚。
幸せ、だ。
その日から私は、彼らを必要以上に見ることをやめました。
その後、高校卒業までに、紫の彼と一度だけたまたまふたりきりで話す機会がありました。
そのときに聴いたのは、お相手の銀髪の彼が何か不安に思うことがあったようで、高校卒業までは交際を隠しておくことにしていたのだということ。
私が思わず、幸せになって。と伝えると、彼は照れたように微笑んで一言ありがとうと言ってくれました。
あれから1年、別の大学に入って会うことはありませんでしたが、つい先日、見間違うことのないふたりの影を綺麗な4月の桜並木の下で見かけたのは、ここだけの秘密です。