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    こはく

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    こはく

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    学パロ🦁👟。短編。
    以前書いたふたりの、中学生のある日のお話。
    お楽しみいただけると幸いです。

    #Lucashu

    初夏の香りと迷いごと中学二年生の夏のとある日。
    授業の体育にてグラウンドでサッカーをしていた僕らは、前年を軽く超えるとてつもない暑さに真正面から襲われていた。
    「シュウ〜あつい…………」
    今は、隣のクラスの試合を観戦中。いつも通り僕の横にはルカが座っている。
    「やっぱり、日陰代わろうよ。僕は大丈夫だから」
    試合交代となった瞬間真っ先に駆け出した男子諸君は、広いグラウンドの隅に一本だけ堂々と生えた学校のシンボルのような大木の影に皆して集まった。
    その初動にやや遅れを取った僕らが並んでその段に腰掛ければ、ちょうどふたりのどちらかが日向にはみ出る状態となってしまったのだ。
    さらっとルカが日陰に入れるように後ろに回っていたところ「シュウ!日陰入って!」とまっすぐな笑顔を向けられ、僕は申し訳なく思いながら譲られた席に座ったのであった。
    それから体感約十五分。ルカの顔は見てわかるほど真っ赤になり、額を丸い汗が伝っていた。
    正直なところ暑いものは暑いし、どちらかというと冬よりも夏のほうが苦手だ。
    けれどルカのほうがずっと辛そうだし、それなら僕が代わってやりたい。
    立ち上がろうとすれば、その左手首を不機嫌そうな顔がしかと掴んだ。
    「シュウはいつもそう言うでしょ。何も言わずに倒れちゃいそうでこわいからだめ」
    そう言いながらぐいぐい抑えられて仕方なくすとんと元の位置に座る。
    「…………じゃあ端の子にちょっと移動してくれないか頼んでくる」
    そう言って立ち上がれば、今度は必死な顔が左足首を掴んだ。それは転んでしまうから危ないよと取り敢えず一回叱る。
    彼はそのことには素直に謝ってから、僕の耳元にこそこそと囁いた。
    「一番端のやつは、シュウのこと一方的に嫌ってるからだめ」
    そう言いながら顔を顰めて、「だから俺あいつきらい」と隠しきれない本音まで零した彼に笑ってしまった。
    「全然見に覚えがないんだけど、僕が何したか教えてくれる?」
    にやにやと口角を上げた悪い顔をして、そのこそこそ話に乗った。
    こういうのはちっとも嫌いじゃなくて、ルカもきっと同じ。僕らはそういうところも、とても気が合うのだ。
    「あいつの好きな子がさ、シュウのこと好きなんだって」
    にっと笑って与えられた理由は予想外の角度で、驚きながらも僕は恋愛ごとに疎いルカが何故そんなことを知っているのかのほうがよっぽど気になってしまった。
    「友達が報告してくれたんだよ。シュウを守れって」
    視線から察したのか頭に浮かんでいた疑問に答えてくれた彼は、続けて「その友達、あいつと同じ幼稚園だったんだけど、その頃から狂暴だったんだって」と言ったので僕はおかしくてまた吹き出した。
    幼稚園の頃の話を持ち出されては、流石に彼も不本意であろう。
    「シュウ〜笑ってる場合じゃないってば。何かやられたらすぐ俺に言うんだよ」
    一生懸命僕を心配してくれるルカが嬉しくて、どうしても微笑み分くらいには頬が緩んでしまう。
    しかし、そんなお喋りに興じている間にもルカの体操服には染みが広がっていた
    「わかった、わかったけど、今はルカが心配なんだって。せめて五分ずつでも交代しようよ」
    そんな数回目の提案にうーんと唸りだした彼をゆっくり待っていれば、やがてその表情はぱぁっと輝き、音と共にその頭上には電球が浮かんで見えた。
    「じゃあシュウ、肩だけ貸してくれる?」
    まだその段階では何も汲み取れなかったが、僕の肩くらいならなんだってお安い御用だ。
    「いいよ?」
    「ありがとう」
    承諾に笑顔になって、いそいそとタオルを畳み始める彼。汗をかいていても格好良いし、その横顔は今も眩しく輝いている。
    「綺麗なやつだから大丈夫だよ」
    そう告げた楽しそうな彼の手により、ハンカチほどのサイズになったタオルは僕の肩に設置された。
    一体なんだろうと未だにちっとも読めない彼の考えに頭を働かせていると、突然肩にタオル以外の重みを感じた。
    反射的にそちらを見れば、親友とばっちり目が合う。
    「やっぱり。これでちょっと日陰になった」
    そう言ってVサインを寄越した彼の上半身は確かに彩度を落としている。じゃなくて。
    「で、もその、ちょっと近くない?」
    「そう?」
    心拍数は倍くらいに跳ね上がって、目の前の日差しよりもずっと僕の顔のほうが熱いような気がしてきた。
    「シュウがいやならやめるよ?」
    上目遣いでそう問われ、うっかり倒れ込みそうになるのをなんとか堪えた僕は必死で首を振る。
    「へへ。よかった」
    笑いながら、やっぱり随分と涼しいのか濃い影に目を閉じて鼻歌を歌う彼を誰よりも近くに感じた。
    心音はいよいよ収まるところを知らないまま、思考だけが目まぐるしく回っている。
    それでも願っていることなんて、たったひとつだけで。
    この時間が、できるだけ長く続きますように。
    その拙い祈りは、夏の茹だるような暑さを切って遠い青空にまで届いたような気がした。
    シュウがこの気持ちの名前を見つけるのは、もう少し先のお話。
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