月夜に泳ぐワンライ/音
雲夢江氏の子弟には三種類ある。
ひとつは家がないもの。ひとつは近場に家があるもの。ひとつは遠隔地から来たものである。
夜が来て宗主が私邸に引っ込めば、そこから先はわずかな自由時間だ。修練が厳しい分、休息は決まった時間をしっかり取るように決められている。とはいえ少しは羽目をはずすものも出る。
たいていの場合は騒いで気張らしをしたい者たちだ。
そういうとき、潤滑油として荷風酒はぴったりだった。
江澄は酒杯を手に、行儀悪く私邸の円窓から半分身を乗り出すようにして座っている。遠くから喧噪が聞こえてきていた。
騒動を起こしたり、明日に影響を出したりしないかぎりはとやかく言う気もない。自分自身、いくらか身に覚えがあるからだ。
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