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    かこ🦍

    @ka_iue_ko

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    かこ🦍

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    フェイジュニワンライお題「返事」
    キスをするときの目安を伝える話です。

     キスをするときは目を閉じるのがマナーであるとは、一回目の際に与えた知識である。
     聞かされたときは「ふぅん?」と小首を傾げていたジュニアだったが、今日に至るまで律儀に恋人の言いつけを守り、今もギュッと目を閉じている。目蓋と同じように閉じられた唇は思いの外柔らかくて、触れていると心地が良かった。
     キスをしている間ジュニアはずっと口を引き結んでいるので、フェイスは割りと好き勝手に──照れて怒った恋人にキスを中断されない程度にその唇を喰んだり、たまに舌先でつついて舐めてみたりしている。
     その度に肩を揺らし、何かを堪えるように目蓋を震わせるジュニアの反応を見るのは楽しいものだが、もう少し…いや、もっと刺激が欲しいところ。ジュニアとのキスは現状、ほぼ口を押し当てるだけに留めている。
     ──目は閉じろと言ったけど、口まで閉じなくてもいいんだよな…。
    「ね、おチビちゃん」
     ほんの少し唇を離して囁きかける。キスの間、息を止めているジュニアは返事をする前に深呼吸を挟む。待たずにフェイスは言葉を繋げた。
    「お口、開けてみて」
     ──あんぐり。
     そんな表現がぴったりなくらい、大きく口を開けるジュニアにフェイスは一瞬言葉を失う。きれいに並んだ白い歯の、奥の方まで見えている。思わず凝視した後、次いで笑いが込み上げた。
    「ぶっ……ちょっと……。くく、おチビちゃ……あははっ!」
    「んがっ⁉ なに笑ってやがる⁉」
     あまりに素直に口を開けるものだから、素直すぎて心配な気持ちもあるけど、しかし今はおかしさが勝る。いつまでもケラケラ笑うフェイスを見て、逆に怒りが萎えてきたジュニアは素朴な疑問を口にする。
    「つーか何だよ急に。口開けてたら、できねーだろ…?」
     ようやく笑いがおさまったところで、そんな発言。今度こそ堪えるつもりだったけど、心底不思議そうに首を傾げる恋人の姿に、どうにもあふれる愛しさが声になってこぼれてしまった。フェイスはまた笑う。
     全くそんなつもりはなかったが、バカにされたと思ったジュニアが頬を染めて抗議を始める。
    「おまえが開けろって言ったんだろ! もっとちゃんと説明しろよ!」
    「ふふっ……。説明、ねぇ……」
     ふむ、と暫しの一考。舌を入れたいから、ちょっと開ければいいんだよと、ただ伝えるのでは面白くない。だってこんなにかわいくて素直な恋人を前にして、悪戯心が芽生えないはずがないのだ。もう少し、考える振りをしてからフェイスは一つの提案をする。
    「じゃあ、俺の名前を呼んでみて」
    「はぁ? なんで」
    「いいから。ほら、さんはい」
    「……クソでぃ」
    「そっちじゃなくて」
     瞳を見つめればジュニアは僅かに逡巡し、まるで観念したように小さく息を吐いた。フェイスの名前を呼ぼうと短く息を吸う音が聞こえる。その瞬間を逃さないよう、フェイスはじっとジュニアの口を見つめる。薄っすら開いた唇から赤い舌がちらりと覗いた。
     今だ。
    「フェ、──んぐぅ⁉」
     自分の名前を呼ぶ瞬間。それを合図にフェイスはジュニアの口に唇を押し付けて、そのまま舌を押し入れた。すぐにジュニアの舌に触れる。
     何が起きたのかわからないがとにかくものすごい衝撃に襲われているのであろうジュニアが目を見開いたまま固まっているが、構わず触れた舌を吸って絡めとった。
     ようやく衝撃に追いつき、その感触に驚いたジュニアは逃げるように舌を奥に引っ込めるが、狭い口内では逃げる間も場所もない。すぐに追いかけてきたフェイスの舌にまた捕まって、今度はいっそう強く吸い上げられる。痺れにも似た熱が背骨の付け根から沸き上がり、粟立つように背筋が震える。堪らず、自分を抱える腕にしがみついた。
     唾液でぬるつく舌同士を擦り合わされ、噛み付かれてしまったら、もう逃げようがない。舌を噛まれた微かな痛みさえ甘い痺れに変わって、堪えきれないものが喉の奥から溢れ出そうになる。体が小刻みに震えてしまうのを止められない。
     目蓋の裏が白く点滅して、目眩のような感覚を覚える。もうまともに呼吸もできていない。キスの合間に体がベッドに倒されていることに気がついてはいたが、自力で起き上がる力は抜けきっていた。
     未知の感覚に驚きと戸惑いはあれど、正直嫌ではなかった。…嫌ではないけど、とにかく今は呼吸をしたい。辛抱たまらず、最後の力を振り絞ってジュニアは拳を振り上げた。
     刺激を与える度にいちいち反応を示すジュニアに、フェイスは夢中になっていた。口を塞がれて苦しげに漏れるくぐもった声はフェイスにもちゃんと届いている。けれども今は、ジュニアと深く、キスしていたい。好きな子とのキスは気持ちがいい。口内の粘膜が擦れる度に下腹部から熱が迫り上がってくる。その熱に煽られて、手が不埒に動き始める。
     フェイスの手がジュニアの着ているタンクトップの裾から忍び込み脇腹を這い上がろうとしたところで、背中に──とても強い衝撃が走った。
    「うぐっ」
     殴られた。しかも拳で。
     驚きと痛みで思わずむせて、口が離れる。
    「けほ……痛っ……」
    「てめっ……ながっ……いき‼」
     最後の力を振り絞って振り上げた拳が報われ、ようやく解放されたばかりの口で早速ジュニアが喚き始めた。
    「つーか! く、口開けろって、おまっ……!」
     途切れる言葉の合間に荒く上気した短い呼吸が挟まれる。その度に小さく上下する肩と胸を見るに、どうやら呼吸の仕方がわからず息が限界に達したらしかった。
     それならもっと、可愛らしい仕草で訴えかければいいものを。
    「アハ……でも、わかったでしょ?」 
     何がとは言わず顔を覗き込めば、フェイスの予想通り「何がだよ」と怪訝そうに聞き返してくる。自分から説明を求めたくせに、そんなことも忘れてしまうくらい、ジュニアもまたフェイスとのキスに夢中になってくれていたのかなと思えば悪くないどころか、とてもいい気分だ。
    「俺とキスするときの、口の開け方」
    「はっ、はぁ……⁉」
     頬の赤みが一気に増した。もちろん、酸欠によるものではない。
     フェイスはまだ、ジュニアとキスをしていた心地のままでいる。初めて味わった恋人の舌の感触と口内の熱を思い出して、口の中で舌をうねらせた。もっとしてみたい。
    「それとも、一回だけじゃわからなかった?」
     わざと意地悪く、ニヤけた声と表情で言ってみれば、ジュニアがまた何か言い返そうと口を開く素振りを見せる。からかいの言葉をかけたのは自分だけれど、でも、今したいのはそんな応酬なんかじゃない。フェイスはすぐに態度を変えた。
    「ねえ。……もう一回、してみよっか?」
     ちょっと首を傾けて、あまえた声でお伺いを立ててみる。ジュニアは片眉を上げてフェイスを見た。返答の催促に、服の中に入れたままだった手で脇腹を擽ると「ばーか」と罵られ、拳で肩を叩かれた。そのどちらも威勢はない。
     返事はそれで十分だ。
     もう一度あまい時間を堪能しようと、フェイスはゆっくり顔を寄せる。すぐに気付いたジュニアはやはり律儀に、まず目を閉じた。
     それから恋人の名前を呼ぶように、小さく口を開けてキスを待っている。
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