ミルク珈琲を飲み干すまで「助けてくれ、俺はどうしたらいいんだ?」
カーラインカフェのテーブルに突っ伏し、弱音を吐くウルシ。同席しているナギサとティーチャバは、顔を見合わせて首を傾げた。突っ伏したまま大きなため息
をついて、ウルシは言葉を続けた。
「コドウと俺、付き合い出したんだ。好きな子と彼氏彼女の関係になれて嬉しくはある。嬉しくはあるが、コドウが付き合う前と全然変わらなくて、俺を湯たんぽにするし目の前で着替えを始める。俺、男として意識されてねえのかな……?」
「待って、湯たんぽって何?」
ナギサは状況を理解するため、ウルシの疑問に答えずに、気になる単語を質問した。
「夜寝る時、肌寒いって理由で、ベッドで一緒に寝てくれって……それで、俺をでかい湯たんぽ扱いしてる。毎晩。」
「お前、毎晩女の子と同じベッドで寝てんの?!しかも付き合う前から?」
「健全に、寝てる。腕の中に潜り込んでくるから、やばいとは思う。んで、温かくて良い匂いすんなぁってなって、気づいたら朝。」
色々と順番が可笑しいだろうと、ナギサは呆れた。
「まあ、コドウは夜の営みについて知識無いから、うん。全裸を見られても、何がダメか理解してないし、ウルシが頑張るしかなくない?」
もう少し早く義兄妹になれてたら、教える努力はしたけどね。と、ティーチャバは頼んだ珈琲にミルクを入れながら話に混ざる。口に珈琲を少し含み、眉間に皺を寄せ、砂糖を追加しながら言葉を続けた。
「ウルシが男として見られているか、ってだけなら、大好きな彼氏と認識してるっぽいから、見られてると思うよ。もっと好きになってもらうために、胸でかくしたいとか言ってるし。」
「胸?!」
「胸。男はみんな、大きい胸が好きって思い込んでるよ。」
勢いよく体を起こして目を丸くするウルシ。嘘は言っていないと、ティーチャバはナギサへ視線を向けた。
「コドウちゃん、スレンダーボディだもんなぁ。うん。ところでチャバサン、どんだけミルクと砂糖入れるつもりなんですか?」
頷きながら、ナギサの視線はティーチャバの持つカップへ向けられた。珈琲が、パステルカラーに近いブラウンになっている。
「もう少し。」
「今でもかなり入ってる気がするんだけど?チャバ?お前もしかしてブラック珈琲苦手?」
「煩いなぁ、今はウルシのケツ叩きする時間だよ。」
それかけた話は、再びウルシの悩みへ戻った。
それからしばらく、男三人の会話が続いたのだった。
ミルク珈琲を飲み干すまで