Good morning,yesterday 物事の終わりはいつだってあっけない。短くはないこれまでの人生の中で、当時はかけがえがないと真剣に思っていたものも幾度となくこの手からこぼれていった。そのときは胸が張り裂けそうな思いに駆られても、ふと気が付けば、まるでぼんやりと見ていたドラマの結末のように、どうでもよい思い出のひとつになってしまう。そんなことを両手に余る以上体験してきた。
幻想なのだ、心から愛するなにかと出会えるなんてことも、もう二度と埋められないものがこの世にあるなんてことも。
それは若さや青さが作り出した都合のいい舞台装置で、自分を主人公にするために欠かせない小道具でしかない。
渇望していた輝かしいなにかをついに得たそのときには、これを失ったその日に自分の世界が終わる、そう強く感じることも珍しくない。やがて長いなり短いなりの時を経るうちに、輝いていたはずのそれは色褪せ、錆びつき、日常の中に溶け込んでしまい、そのときには鈍い光すら放たなくなっていることに気が付く。
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