大人にしあず(4)朝の海は、目に映る全てがすがすがしい。
肺いっぱいに大気を吸い込むと、港独特の匂いがほんの少し混ざった潮の香りが鼻をくすぐる。
「お待たせ致しました、レギュラーサイズ2つです」
「ありがとう」
展望デッキに併設されたショップで、東峰がコーヒーを受け取った。
「あざっす。すんません、おごってもらって」
「長旅お疲れ様の気持ちだよ」
デッキの端に脚を進めながら後輩にカップを渡すと、こちらを見上げる顔がニッと白い歯をむけて笑う。満面の、西谷の笑い方。いつぶりに見るかわからないのに、なぜだかつい先日見たような錯覚に陥ってしまう。
「それにしてもびっくりしました。迎えに来てくれるって思わなくて」
「うん、俺もびっくりしてる」
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