「ドーイツっ、やっほぉ」
ソファで寛ぎながら本を読んでいると、いつの間にか家に侵入していたイタリアに背後から抱きしめられた。今まではドア鈴を忙しなく鳴らし、騒ぎながら突入してくるのが常だったのだが、最近は合鍵を使ってこっそり入り込んで家主を驚かすのがブームのようだ。初めの頃は不法侵入だと叱りつけていたが、近頃はもはやどうでも良く思えてきて、野良猫のようだなと軽く応えるだけで済ましている。
…まあ、こいつに対して少々甘い自覚はある。
「ねーねードイツ、俺来たの気づいてた」
「いや、読書に集中していたから気づかなかったな」
「すげー ドイツに気づかれなかったしもうスパイでもなんでも出来るね」
やったーと嬉しそうに笑って、ぐりぐりと頭をドイツの首元に擦り付ける。完全に猫だ。
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