お風呂から上がって寝室に向かった俺を、ドアを開けた途端に寒いくらいの冷気が包み込んだ。うわぁ、とちょっと引きながら部屋の中に入りベッドに横になるふーふーちゃんの隣にくっつく。
「おかえり。ちゃんとあったまってきたか?」
「ただいま。あったまったけどさ……ねえ、ちょっとこの部屋寒すぎない? ふーふーちゃんってそんな暑がりだっけ」
「あ……ふふふ、もう少ししたら温度を上げるよ」
「……なに笑ってんの」
「いいや?」
くっつくだけじゃ足りなくて、彼の体温を探ってぎゅーっと抱きしめる。ふーふーちゃんは俺のことを抱きしめて腕の中に閉じ込めくすくすと楽しそうに笑った。なぁに、と唇を尖らせれば温かい唇がちゅっと触れる。
「浮奇、暑いの苦手だろ?」
「……まあ好きじゃないけど、こんなにキンキンに冷やさなくても」
「寒いのも苦手だよな」
「……そうだね? なんなの」
「夏は浮奇がくっついてくる頻度が下がるけど、こうしてクーラーをガンガンに効かせて部屋を寒いくらいにしておけば、寒がりの恋人が釣れるんだよ」
ふーふーちゃんは得意げに笑ってそう言った。なるほど、家中のクーラーの設定温度がいつのまにかうんと下げられていたのはそういう理由か。俺より夏に弱い彼が厳しい暑さに耐えきれなかったのかと思っていた。
……もしかしてこの暑さより、そのせいで俺がくっついてこないことに耐えきれなくなったの?
「こんなに寒くしなくたって、ふーふーちゃんのことならいつでもぎゅーってしてあげるよ」
「汗をかくからあんまりくっつかれても困る」
「わがまま。汗をかくのと俺がくっつくのどっちがいいの?」
「……浮奇がいい」
「んふふ」
素直で可愛い恋人にんーっとキスをして、隙間なくぴったりと体をくっつける。お風呂上がりであったかい体、暑い日は嫌がるかなって思ってたんだよ。暑いのよりも汗をかいちゃうよりも、ふーふーちゃんに嫌がられるのが一番嫌だもん。
「そろそろ寝るだろ、クーラーの温度を上げてくる」
「……ストップ」
「ん?」
「まだそのままでいいよ」
「この温度のまま寝たら風邪を引くぞ」
「まだ寝ない。たぶん汗をかいちゃうからこのままにしておいて」
「……なにをするんだ?」
「熱くなること」
彼のほっぺたを両手で挟んで顔中にキスを降らせる。されるがままのふーふーちゃんに気分をよくして顎から首筋、鎖骨へと唇をズラした。
「浮奇」
「んー」
「……脱ぐ、から」
「ふ。……脱がせてあげるから、安心して?」
体を起こしてふーふーちゃんを上から見下ろせば、彼はごくんと唾を呑み熱がともった瞳で俺を見つめてた。ほら、やっぱりクーラーはそのままでよかったよね。