一
三年生になって、珍しいことがあった。クラスに転入生が来たのだ。僕の学校は県内でも有数の進学校で、編入となると相当難しいテストを受けない。きっと頭が良いのだろう。
出席番号は離れていたが、彼は二列目の先頭で、一列目先頭の僕と隣になった。落ち着く声で自己紹介を済ませた彼をなんとなく目で追ってしまう。
珍しい色素の薄い髪にすらりとした体格。流行りの服を着せたらファッション雑誌に載ってても違和感が無さそうだ。そんな風に、男の僕から見ても、彼は整った容姿をしていた。
クラスの女子が色めき立っているのを馬鹿馬鹿しい、と思って薄ら笑いが浮かんでしまったところで、彼と目があった。灰色の瞳。ネコ科を思わせる吊り目気味で、形がいい。それが人懐こそうに細まった。会釈の後、彼は背中を真っ直ぐに椅子に座って、次の生徒の自己紹介を待った。
……なんか仲良くはなれそうもない気がする。根本的に僕とは性質が違いそうだ。
補足
テストがいい点なのを頭が良いと言ってしまう高校生の足立さん
「警察官、きっと似合うと思うよ」
「不純な動機って怒らないの」
「それは、それだけ聞けばだけど。でも、正義に働きたい気持ちがなければ、候補にならないと思うんだ」