夏の遊び「しーしがーみさーん!あっそびーましょー」
その一言と共に来訪した真経津は、その日は何をするわけでもなく獅子神の作った昼ご飯を当然のように食べながら来週の水曜日の町内夏祭りに浴衣で来るようにと厳命して帰っていった。
「浴衣、なぁ」
浴衣は、持っていた。
獅子神の体格に合わせた浴衣というのは残念ながらすぐに手に入る物ではなく、安物ではなくそれなりの生地のものを反物から作ったものを一着。
貯金を減らす意図で、家や車を買ったときに気まぐれで作ったもの。
着たことはなかった。
幼い頃、夏祭りに浴衣で遊びに行く約束をするクラスメイトを横目に見て、母さんに強請って、怒鳴られた。
そんなもの、アンタに要るわけがない。浴衣なんて似合わない。無駄。
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