服部耀と年上彼女服部耀にとって後に彼女となる女との出会いはそれなりに派手なイベントだった。
それはある通勤電車の出来事だ。
その日の服部はたまたま捜査で泊まりになり、いつもとは違う電車に乗っていた。
その線路は東京の西から都心に向かう唯一の電車で、朝の通勤時間は恐ろしく混んでいた。
電車の混雑事情に明るくなかった服部は押し寄せてくる人の波を自身の体で受け止めながら内心舌打ちをした。
こんなに混むと知っていたらタクシーでもなんでも使うんだった。
どこかで人が減ってくれないだろうか。
服部の微かな希望を打ち砕くように、駅が進むにつれて人の濁流は激しくなって行く。
残念なことに電車の乗客はほとんどが同じ駅を目指しており、更に悲しいことにその行き先は終点を指している。
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