昼休み。いつもの場所でお弁当を広げていると、珍しくシャルルがお弁当の袋を持っていることに気付いた。
普段は購買やコンビニでパンなどを買ってくることが多くて、あまり見ない物に興味を引かれる。
「今日はお弁当なんだ?」
「ん、ちょっと節約」
シャルルはそのまま新しいシューズが欲しいと語りだした。
確かに先日見たシューズの具合は良くなかった。
丁寧に手入れをしているのを知っているけれど、それでもあの練習量を考えるとそうなるだろうとも思う。
シャルルの言葉に相槌を打ちながら自分も弁当を取り出して、顔を上げると驚かされた。
「でっか!?」
両手に余るほどの丸くて黒い塊。
よく見れば大きなおにぎりのようだ。
驚いてぽかんと見ていると、シャルルは照れくさそうに頬を掻く。
「朝時間無くて、適当なおかず詰めて握ったらこんなことになってさー」
「自分で作ったんだ?」
「ああ。量もこのくらいないと部活持たないし」
返事にいつものような明るさがなく首をひねる。
不思議に思いながらも、俺はそのおにぎりを見て言った。
「いいよね、そういうおっきいおにぎり!俺も好きなおかず詰めて作ってみたいんだけど、食べきれる気がしなくて」
ああいう、ボールみたいなおにぎりを漫画か何かで見て作ってみたい、食べてみたいと思ったけれど、実際の分量を思うと絶対食べきれなくて作れない。
「その半分くらいからチャレンジしてみるべきかな……」
そんな風にうんうん悩んでいると、突然ぷっと噴き出す声がした。
「え!?なんで!?」
驚いて声を上げると、シャルルはせきを切ったようにゲラゲラ笑いだす。
そして目に涙を浮かべるくらいひとしきり笑って言った。
「俺、アンタのそういうとこすげぇ好きだ!」
「はあっ!?」
突然何を言い出すのかと真っ赤になってますます慌てる俺をよそに、シャルルはもう一度「好き」と言った。
だから、急に何!?
どう返事を返せばいいのか分からず、紅い顔のまま拳を握るしかできなかった。