無題ーー何故、槍を手放したのか。
銃剣のシンプルなシルバーに掘り込まれた獅子に視線を落としながら言われる。そういえば整備が終わったタイミングでの突然の来訪だったため片付けそびれたことに思い至った。
オールド・シャーレアンに所在するバルデシオン分館、冒険者向けとして割り当てられた一室。夜更けに交わした酒の席での問いに、即答は出来なかった。
その僅かな沈黙を不審に思ったのか、銀糸の隙間からアルコールのせいかより鋭くなった眼光が、こちらを睨みつけている。いや、気の知れた"相棒"のことなので実際は心配されているのだと理解しているのだが。
「んー、キャラ被り?」
「俺の方を見るな。それと誤魔化そうとふざけるんじゃない。……そうは言ってもその銃剣はサンクレッドと被るだろう」
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