Break the Wave「来ると思っていたわ、テッド」
ウェドの背後から、気味の悪いほど艶を帯びた声がした。岩壁に空いた穴の奥の暗がりから音もなくぬらりと姿を表したシーナは、見せつけるようにウェドの頬をついと撫ぜてテッドに微笑みかける。
「さあ、こちらへ来て…今、貴方の魂が必要なの」
唇はなめらかに弧を描いていたが、シーナの瞳は少しも笑っていない。背筋をぞわりと撫でられた気がして、テッドの身体に緊張が走り、無意識に後ずさる。甲高い金属音と共に、視界の端で火花が散った。テッドに注目がいった隙をついて飛びかかったアルダシアの大槍は、ウェドの恐ろしいほど正確な銃撃に弾き返された。
「ちぃッ…!クソが…!」
ウェドがおもむろに地に掌を向ける。突然足元の地面がわななくように細かく波打ち、青白い光が染み出してきた。それは宙に浮き出して次々とウェドの手元へ集まり、みるみる間にクリスタルの大槍となった。
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