影踏み 石蒜(=彼岸花)は血を吸って赤くなるのだと子供の頃に教えられた。
墓の周りによく咲いているので真実味がある。実際は花の持つ毒性を利用して、墓の下に眠る死者の身体を鼠やモグラに食い荒らされないようにと植えられている。
そして毒性がある花に子どもを近づけないために不穏な印象を植え付けたのだろう。
妖艶で燃え盛る炎のような群花。
あれから何度目かのこの花が咲く季節が訪れた。
季節が巡れば咲いてまた枯れ果てていく数多の草花のうちの一つに過ぎないが、今はこの花を見かけると目が離せなくなる。
その吸い込まれるような赤を見て、確かに血を吸っているのかもしれない、と藍忘機は呟いた。
「含光君?」
隣に並び歩く藍思追が聞き返したが
1073