「あれは……、なんなんだろうな」
指導官のひとりである男がいささかげっそりと報告に来たとき、のちの管理官になる鉄の女は、それでも少し眉を上げて先を促すに過ぎなかった。その肝の据わり方は、若くして彼女を性差なく地位を確固たるもとのに仕上げた一端でもある。だからこそ、いまのように彼女と同年代の男でも対等に居れる。
シルヴィアの配下に置かれた噂の新人は、軍から引き抜いたと聞いていた。軍曹とはいえまだ随分若く、なにより軍部を出し抜き年齢を偽り兵役に自ら身を投じたという、その経歴だけでしごきがいがあるとありとあらゆる面で言われていたし、自分とて、その評価がけして過大なものとも思っていなかった。その根性は買って然るべきである。
1155