何も残さないでこの目に美しく映るものを、お前に上手く伝えるにはどうしたらいいだろうと考える。
朱雀門惟光の友は、盲目である。
今よりずっと狭い場所に生きていた自分に、新しい世界を与えてくれた友。その彼の、視界というひとつの世界が閉ざされてしまっているというのは、なんて皮肉な話だろうか。だというのに当の本人はそんなことは何処吹く風であると、そんな様子で今日も笑っているのだ。それがなんだか悔しかった。
彼にみせたいものは沢山ある。それを拙い言葉だけで、自分の目に焼き付く美しさの、どれだけをちゃんと伝えられているのだろう。きっと殆ど伝わっていないに違いない。いつもと変わらない調子で"良かったね"と笑うのが、その証拠なのだ。
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