「なんだ、おいぼれ、貴様まで出張ってきたのか」
聞き覚えのある声にマトリフが目線を向けると、そこには元魔王が佇んでいた。
ハドラーはマトリフがただ一人座る卓にドカッと酒瓶を置き、制止する間もなく腰を下ろした。マトリフの、ちょうど空になった手元のグラスに酒瓶を傾ける。なんだ気味が悪いじゃねえか、と混ぜっ返すも、元魔王はふたたび不機嫌そうに問うだけだった。引退した初代大魔道士までひっぱり出すほどパプニカは危機的な状況だったのか、と。
「いいや、今日はタダ酒を呑みに、な」
マトリフは事が無事に終わったあと、せっかくだから師匠も一緒に、と弟子に呼ばれたのだった。それを聞いて心なしかハドラーから緊張感が解けたようだった。
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