「記憶喪失になったヒュンが強引に公開プロポーズをした」久しぶりにポップの元に帰ってきたヒュンケルは、一見何も変わらないように見えた。
パプニカ城の男性陣の中で、一番雅で美しいと噂された銀糸のように揺れる髪。その銀髪に縁取られた白磁の肌、奥底で深く光を湛える紫水晶の瞳。
ただ。
「ポップ」
久しぶりに自分を呼んだ声色が、心もとなげに揺れた気がする、以外は。
レオナ姫から騎士団帰還の報を貰ったポップは、午後の仕事を放り投げ足早に騎士団詰所を訪れた。入口から右手に設置されている休憩用の革張りの長椅子に座り、はぁっと一息つく。
「ヒュンケル、久しぶりだな!」
「………」
ヒュンケルは寡黙な男だ。
常に人を優先し、自信を律する人格者と言われて男女共に羨望の的と噂されている。
それも変わらない、はずだ。
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