Early Morning Blue「……すまない、起こしたか」
ほんの僅か、床が軋んだ音に微睡みから引き上げられる。そして静謐を揺らした声に視線を動かすと、申し訳なさそうに眉尻を下げた蒼と目が合った。それだけで、ほう、と息が漏れるのがわかる。あの深碧の魔境から命からがら還ることが出来たのだと、眠りから醒める度に安堵する。
憶えてはいないが、夢見が悪かったのは確かだ。本当はすぐさま飛び起きて、気遣わしげな彼に何ともないと朝の挨拶といきたかったが、未だまとわりつくような夢の残滓に寝台の上で身動ぎすることしか出来ない。
そうしているうちに、こちらへ歩いてくる人影の金の髪と蒼が洋燈の薄明かりが照らす部屋でより鮮明になる。また少し目の下の隈が濃くなったのではないか。自然と出た掠れた声にいつものことだと答えになっていない言葉を寄越して、その人物は寝台に腰を下ろしてきた。
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