2024/3ホワイトデーSS 三月十四日、ホワイトデー。タルタリヤは自身の通う高校の敷地内にある付属中学の正門前に佇んでいた。遠巻きにタルタリヤを見てくる何人かの視線を感じる。直接家へ行った方が良かっただろうかという考えがよぎるが、この手の中の物を妹と一緒に作っていた昨日からずっと、いや、バレンタインのあの日からずっと頭は彼女のことでいっぱいで、いてもたってもいられなかったのだ。ほどなく、彼女は現れた。独りだ、都合がいい。
「蛍」
声をかけると、蛍は驚いた様子だ。久しぶりに見る制服姿の彼女はすぐにタルタリヤの腕を取ってぐいぐいとどこかへ引っ張っていく。ちょ、胸が……当たる、当たってる。
人気のない場所まで引っ張られて彼女を見下ろしたら、なんだか怒っているような顔つきでうつむいている。
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