星に触れる マッシュは友人の寝顔を見つめていた。いつもどおり早く眠りについたはずが、珍しく途中で目が覚めてしまったのだ。
夜中に起きていることなど数えるほどしか無かったマッシュは、落ち着かずベッドから身を起こした。部屋を見回すと、少し離れたベッドにフィンが横たわっている。
足音を殺してそっと顔を覗き込むと、彼は深く眠っているようだった。微かに上下する胸を確認し、マッシュは息をつく。
先日、フィンは神覚者候補選抜試験にて大怪我をしたばかりだった。オルカ寮のカルパッチョ・ローヤンに首を掻き切られそうになっている彼を見つけた時、目の前が怒りで真っ白になったことを覚えている。
普段は自分から前に出ようとはしないフィンを、マッシュが連れ出した。友達と一緒に試験を受けたかったから。そしてこの先も家族やみんなと平和に暮らすには、仲間がたくさん必要だと分かっていたからそうした。
結果的に、その決断は正しかった。彼がいてくれたから、自分は今ここにいられる。
でも、とマッシュは固く拳を握った。
魔法で治療されて傷はもう治っている。しかし、フィンの首元にはまだうっすらと痕が残っていた。それに思わず触れようとして、手を引っ込める。
彼の顔を見つめる。窓から差し込む月明かりで白く、淡く光っている。それを眺めながら、マッシュは心の中でこう決意した。
マッシュは決して、一度決めて実行したことを後悔したりなどしない。それはマッシュの力になりたいと命を懸けてくれた友人みんなに対する、侮辱になるから。
その代わり、どんなに傷ついたとしても、最後には必ず守ってみせる。
マッシュは最後に布団から出ているフィンの手に、優しく触れた。それは温かく柔らかく、ああ生きている、とマッシュは思った。