特別な朝に side悠―――
「……好きだ、悠。」
低く、甘く、そして柔らかいその声は唐突に頭上から降り注いだ。
意識が浮上しているにも関わらず、すぐに目を開けなかったのはなんとなく、視線を感じていたから。一夜を同じベッドで過ごしたのは今まで何回かあったけど、恋人同士の一線越えて……朝を迎えたのは今日がはじめて。……だったりする。思い出しただけでぶわってなりそうなのに、まさかこのタイミングで虎於から好きだって言われるとは思わなくて、今すぐに目を開けて「言って、もういっかい」って言いたくなる。でも絶対そんなことしたら慌てるに決まってる。いま言ってくれたのだって絶対、オレが寝てると思ってるからだろ。流石のオレも空気、読んでみる。きっとそんなことしたら虎於のヤツ、カオ真っ赤にして起きてたのか、ってするんだろうな。そうなる虎於を見たくないのか、って言われたらそりゃ見たいに決まってるんだけど。
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