式三献 祝杯をあげようということになった。
知人の結婚の祝いである。
この時代だ、盛大なことはできないしするつもりもないよと笑う知人に、友人が
「じゃあ神であるこの僕が祝ってあげよう!」
と無謀な酒盛りを計画したのであった。もちろん取り仕切るのは神主であるお前ダッ!と、律儀に巻き込んでくれた。ありがたくて涙が出る。
祝いの席と言っても蓋を開ければ見知った面子のみの気安い宴会である。要は榎木津が酒を浴びたいだけなのだ。無論知人にはこの方がきっと喜ばしいことなのだろう。顔を真っ赤にしながら勧められるだけ酒をあけている。
「凶悪すぎる顔をしているぞお前」
宴もたけなわ、ふと背後から投げつけられた言葉にどきりとした。振り返ると、先ほどまで目の前で木場の旦那と肩を組みあっていた榎木津が鋭い目つきで自分を見ていた。
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