【二次創作】かき氷を食べる話(春クリ)「暑いですね……」
図書館からの帰り道、クリスは手を扇いで自分に風を送る。
梅雨明け前の7月、本格的に夏が始まる前ではあったが、夏の暑さは猛威をふるっていた。
空調の整った図書館を出ると、その気温差が大きく感じる。
「こういうときはかき氷なんて食べたいですね」
隣を歩く春が制服をつまんで体に空気を通す。
「そうですね。ちょうど駅前にかき氷の屋台が来ていましたね」
「せっかくですし、食べてから帰りますか?」
「いいですね」
そうして2人は駅前に向かった。
駅から伸びる商店街の入り口にある、小さな屋台。そこで売られている宇治金時に目を留めた。
「初めて見ました」
クリスは興味津々で眺めている。
「私はこれをお願いします。おいしそうですし、なによりかわいいです」
「宇治金時ですね。私も同じものをお願いします」
2人はそれぞれかき氷を受け取り、空いているベンチに腰を掛けた。
「クリスちゃん、お味はどうですか?」
「とてもおいしいです。私、抹茶も小豆も大好きで」
「白玉も冷たくておいしいですね」
2人はお互いの顔を見て微笑んだ。
ひんやりとした感触と、甘い小豆の風味、そして抹茶の風味が口に広がる。
「キーンとしてしまうから、一度にたくさん食べすぎないよう気をつけないとですね」
クリスはそう言って、スプーンのさじにちょこちょこと氷をすくって食べていく。
「つい夢中になって食べてしまうんですよね」
春はその様子を微笑ましく見守る。木陰に座っているおかげで日差しが遮られ、風が心地よい。
「いい風ですね」
「ほっとします」
「風鈴を設置したくなりますね」
「風流ですねえ。あの音が涼やかで好きなんです」
「今度うちに見に来ますか? スイカも用意しますよ」
春にそう言われ、クリスはスプーンの手を止める。
「いいんですか?」
「もちろんですよ。母も喜びます」
クリスはニコッと笑顔を見せ、再びスプーンを動かす。
「ここも、またぜひ来たいです」
「そうですね、いろんな味があるようですし。暑い日にまた来てみましょう」
「ふふ、楽しみが増えました」
帰り道は疲れた顔を見せていたクリスだったが、今はうきうきとかき氷を食べている。
「きっと、思い出もたくさんできますよ」
そう話す春は、笑顔でクリスを見つめた。
目が合って、再び笑い合う。
暑くも楽しい、夏の始まりの日だった。