或るモブの独白他人と視線を合わせるのが苦手だった。
卑屈で自意識過剰、根拠の無い自信ばかりが肥大化した肥えた身体付きに低い身長。いつもきょどきょどと落ち着かず、狼狽えてばかりいる。みっともない自分の姿を、誰かの視界が捉えているのだと認識することが怖かった。
だからいつも背を丸めて、俯いて歩いた。
大嫌いだった。自分も、そんな自分を取り巻く環境も。
オレの両親は飛び抜けて裕福ではないけれど、急速に普及が進んでいたとはいえ高価だったパソコンを、子どものおもちゃにぽんと買ってくれるような人たちだった。子どもにはなるべく多くのことをしてやろう。今思えばそんな考えだったのかもしれない。数年自室に引きこもり、外の世界に恐怖しかしない、入ったばかりの中学には一度も行けていない、そんな自分にとって、その機械の箱から無限に広がるような世界は、唯一の外界との繋がりで、救いだったように思う。
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