一、
「ちゅーなんかただ口と口くっつけるだけだ。全然大したことない。だって家族とするじゃん。飼ってる猫とか犬とかさぁ。ほっぺたとかオデコから少しズレただけで何が変わるんだよ」
昼休みに教室の一番前の方で谷垣とそういう話をしてたら通りかかった花沢が突っかかってきた。
「家族とキスなんかしない」
「えっそうなのか」
「するよ!谷垣だってするよなぁ?」
「……い、妹のほっぺにしたことある」
「ほらぁ。鯉登だってしょっちゅう兄貴にチュッチュされてんじゃん」
「……お前らが変なんだ」
花沢はぎゅっと顔をしかめて口を尖らせた。
「勇作としねーの?」
「しない」
「してやれよ、喜ぶぜ」
俺がふざけて肩を掴んでチュッチュ〜と音を立てたら急に怒った。
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