ザクレノ こいつは、夢か?
思わず口にした言葉すらも実感が湧かない。
だって、よく分からない場所で『あいつ』が動いて喋っていた──あの頃と同じ様に。
でも感じる違和感。
その正体は直ぐに分かった。
ザックスは、オレとの『時間』を覚えていない。
無様に泣いて縋り付いて取り乱ださなかった自分を褒めて欲しいもんだ。
涙は『あの日』から一粒も落としていなかった。なのに、あいつの姿の後ろ姿を見ただけでじわりじわりと体中の水分が目元に集まっていく。
ダメだ、これが落ちてももう拭ってくれる手はないのに。
長い時間を掛けて一人でも立っていられる様になったのに、今更。──女神サマってやつはどうにも残酷らしい。
この世界で出来る事?その中にオレとの事は含まれないくらい弁えてるつもりだし、ザックスの為ならいくらでも手を貸してやるさ。
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