再会、そして、『待ってて、くれませんか』
俺の服の裾をぎゅっと握りしめながらそう言ったきみの顔が、ずっと忘れられない。
とても真剣な、でも、今にも泣き出しそうな表情で。
そんな顔をされて、否と言えるはずもなくて。
『……分かった』
俺は、ただ受け入れてきみを手放すしかなかった。
あれから、何年経っただろう。
きみの言葉を信じて、俺はずっと待ち続けたよ。
今日、この日を。
約束の場所は、思い出の公園。
きみは、本当に来てくれるのかな。
◇
数年前、私を好きだと言ってくれる人がいました。
私の大好きな人でした。
とてもとても嬉しくて、だからこそ、離れなければならないと思って。
『待ってて、くれませんか』
私には夢があって、それを叶えるためには、その人と離れるしかなくて。
理由もなにも告げず、ただ待っていてほしいとしか言えない私を、その人は受け入れてくれました。
今日、やっとその人と再会できるんです。
約束の場所は、思い出の公園。
あの人は、本当に来てくれるのかな。
◇
「ひなちゃん!」
桃崎ひなが公園に足を踏み入れると、聞き慣れた、でも、すごく懐かしい声に名前を呼ばれた。
「あ……春、さん……」
駆けよってくる弥生春の姿を見とめたとたん、ひなの視界が涙でぼやけた。
「久しぶり、ひなちゃん」
「お久し、ぶり……です、春さん……っ」
我慢できず、ひなの頬を涙がこぼれ落ちていく。
嗚咽をこらえようとするひなを、春はなにも言わずにそっと抱きしめた。
その変わらない優しさに、ひなはとうとう抑えきれずに声を上げて泣きだした。
そんな彼女の頭を、春は愛おしげに優しく撫でる。
「ずっと会いたかったよ、ひなちゃん……ねえ、今度は、ちゃんと答えをもらえるかな?」
春の言葉に、ひなはしゃくり上げながらも何度もうなずく。
その反応に嬉しそうに微笑むと、春は泣きじゃくる愛しい人を腕に閉じ込めたまま、その耳元で優しくささやいた。
「――好きだよ、ひなちゃん。ずっときみのことを忘れたことはなかった。どうか……俺の恋人になってください」
「……っ、はい……!」