「よ、桐生クン」
「チッ、尾田かよ」
今日も今日とて尾田が挨拶すると桐生は嫌そうに顔をしかめた。
上司に対する態度がなっていない。立華にはあんなに大人しい筈なのだが…。
むくれる桐生の肩を掴むと強引に口付けた。ほんの一瞬だったが桐生は信じられない顔で尾田を見ていた。
「な…な…っ」
「ん?何だ桐生クン?初めて見たいな顔してさ。極道だって男同士のキスの1つや2つするだろ?」
「し、しねぇよ!そんなもん!」
「ん〜なるほどねぇ。さぞあの男に大事にされてきたんだな」
あの男⸺風間親太郎。桐生の育ての親と言うべき人物。桐生も彼の兄弟も風間の背中に憧れて極道の道へ足へ踏み込んだと聞いていた。
何も知らない綺麗な濁りのない無垢な瞳を見つめる。この瞳を⸺綺麗な身体を己の手で汚してやればこいつはどんな顔をするだろう。
「⸺…堪んねぇな」
ぺろりと舌なめずりをする。キラキラと光る目が尾田の顔を射抜き目を細めた。
全部穢して、壊して曝け出して。まだ若いこいつには相当堪えるだろう。そうすれば少しは言いなりになってくれるのではないか。
「なぁ、『教育』してやるよ。桐生クン?」
ポンポン、と肩に腕を回して軽く叩く。
何も知らない桐生は何かを言おうとして口を開いたがすぐに閉じ仕方ねぇな、と目を伏せると尾田と共に部屋の奥に消えていった。