花よりだんご、よりお昼寝「──今年は生長の遅いさくらの蕾ですが、週末を明けると一気に開花する予報です。特に週末はグッと気温が上がりますからね、お花見なんかも賑わうかもしれませんね──」
そんなアナウンサーの言葉に次いで、画面の向こうにはひと足早く、花見を楽しむ人々が映し出されていた。
こんな日は酒が美味いんですよ。まぁいつも飲んでるんですけどね、ははは───
大判な青いシートの角に、飲み干された空き缶が数本、風に煽られるように転がっている。インタビューを受けている男性の後ろには、楽しそうに談笑している家族らしき人々。
「お花見─…」
ぼそっと零れた言葉は、静かに、誰もいない事務所の静寂へと呑まれていく。
換気のために、少し開けといてくださいね と伝えられている窓からは、春目前の柔らかな空気が入ってくる。
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