風景 三 自分を挟んで眠っている二人の温かさをじんわりと感じて、目が覚めた。
タケルも漣も、自分が昼寝をする前まではいなかったのにいつ帰ってきたのだろう? アパートの鍵を開けて入ってきたのにも全く気が付かなかった。そんなに熟睡していたのだろうか……。いや、それだけじゃないな。きっと自分を起こさないように静かにしていてくれたんだ。
しかし暖房はしっかり付けていたとはいえ、畳の上で寝てちゃ寒いんじゃないか。自分は二人がいるから、寒くはないけど。
押し入れから毛布でも引っ張り出してくるか。そのためには、二人を起こさないようにそーっとここから抜け出さないと。
そろりそろりと身じろいで、なんとか上体を起こそうとする。が、しかし。
「ううん……。あ……円城寺さん?」
やっぱりそう上手くはいかない。起こしてしまった。寝ぼけているタケルの問いかけに、小声で答える。
「寝てていいぞ。毛布取ってくるからな」
「円城寺さん、寒いのか?」
「あ、いや自分は……」
タケルが開ききらない瞼をぎゅっと閉じたり、眠気に抗って開こうとしたり、体温が上がってほんのりピンク色に火照って丸くなった顔をして、いつもと違う柔らかくまったりとした声で自分に囁きかけてくる。そうして手探りに自分の手に指を絡めてぎゅっと握ると、寝返りを打って更に距離を詰めてきた。
ぴったり全身で寄り掛かるようにくっついた。起きられない。あったかい。さらにもっと暖めてくれるつもりなのか、足と足が絡み合う。すぐにもう一度寝息が聞こえ始める。
で、そんなほんの数秒のやり取りに目が覚めたのか、次は反対側で漣がガバっと身を起こした。
「オイらーめん屋、どこ行くつもりだ」
さてはこっちも寝ぼけてるな。と気付いたものの、自分が反応する前にドン、と腹の上に体重が乗っかってくる。
「オレ様はまだねみぃ、ん……だ」
自分の腹の上に乗り上げて、胸ぐらでも掴むつもりだったのか顔をぐっと近づけてくる。でそのまま顔がぶつかるかと思いきや……ふにゃふにゃと体勢が崩れて、寝た。
寝癖がぴょんと跳ねた銀髪の脳天が見える。すっかり自分が布団代わりだ。
ぐうぐうと元気な寝息と、すやすやと穏やかな寝息が聞こえる。
あったかいな。毛布なんかいらないか。