A Bookmark and Twelve Cards 空がやけに高く見えるような気がした。
たなびくのは巻雲。空の色はやや薄く、それでいて吸い込まれそうなほどに深い。もう少しで巡る季節を前にして、この季節特有の空色をしていた。
幾日か時を進めてしまえば、風が強く吹き始める。今はかすかにしか聞こえない潮騒も、少しばかりその存在を主張するのだろう。
空に、海に、薄い灰色が乗る季節。
「ディオン様?」
立ち止まって空を見上げるばかりのディオンの背後でテランスが声をかけてきた。いかがなさいましたか、と続けた彼にディオンは向き直った。
一歩だけ踏み出し、テランスの瞳を覗き込む。テランスは一瞬たじろいだが、すぐに落ち着き払った様子を見せた。問いをまなざしに含めるも、ディオンの好きにさせることにしたらしい。
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