「おせェ」
それが、顔を合わせての一言目であった。
闖入者はばっさりと吐き捨てると、ソファに我が物顔で座ったまま、部屋の主の来訪をじろりと出迎えた。
スモーカーは、見慣れた仕事部屋で見るはずのない男の顔に、危うく咥えた葉巻を落っことすところだった。
「お前……! なぜここにいやがる!」
「なぜ?」
驚愕と怒りをあらわに入室した彼に対し、目深に被った帽子の影から覗く瞳は、それを越して遥かに不満げな色を映していた。
「おれに収集をかけたのはお前らの方だろうが。海軍に呼ばれた人間が海軍本部に出向いてきて、何が悪い?」
彼の言い分はもっともであったが、そこはスモーカーが憤っている部分では断じてなかった。
「迎えの船を寄こしてあったはずだ! こんなに速く着くはずが……」
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