誰かのいる家金曜の仕事を終えて帰宅する。明日からは週末だ。
独身の時は家など寝に帰るものだったが、なるほど家に自分以外の誰かが待っている、というのはこういうことかと感じるようになった。
エントランスを抜け、階段を上り、鍵を開ける。
「ただいま」
……。
いつもなら、ここで妻がぱたぱたと走ってくるのだが。
いないのだろうか。
「買い物か?」
上着を脱ぎながらリビングのドアを開ける。
見回せば、ソファの上に人影が。
「アルビナス」
ハンガーに上着をかけ、近付くとすやすやと寝息が聞こえる。
ローテーブルには洗濯物が畳んであり、どうやら作業を終えて力尽きた様子だ。
普段は表情をあまり見せない顔が緩んでおり、僅かに微笑みさえ浮かべて、一体どんな夢を見ているのだろう。
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