瞬く星は終に爆ぜない渋谷で捕まえた男の子を家まで連れ帰った。名前は知らない、住んでいるところも、今は何歳で、どこの学校に通っているかも聞いていない。いくつかの質問は聞こえなかったかのように流されて、続きを問うのを諦めた。
タクシーを降りてマンションのエントランスに入る。少し足を引き摺っているような動きだ。怪我でもしているのだろうか。
はじめは職場の隣のビルで起こった小火だった。終業過ぎ、かなり立て込んだ案件で深くまで残業した日の夜だった。
消防のサイレンを聞きつけ、野次馬となり外へ出た時に、その群衆に彼がいたのを見たのだ。小火が出たビルの上階をじっと見て、慌てる様子もなくそこへ佇んでいた。
次に見かけたのはセンター街だった。金曜の夜に同僚と飲んだ帰り、潰れた同期を支えながら駅までだらだらと歩いていく。その時になぜ嗅ぎ分けられたのかは分からないが、急にきな臭さを感じた。
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