柘榴炎
「洋平、洋平…!離せ、洋平がまだ中にいるんだぞ!」
弾薬に引火し、黒煙巻き上げる禍々しいほどの赤い炎。
燃え盛る兵舎の前、必死に火の中に戻ろうと泣き喚く二階堂の手には双子の片割れ、つい先程まで生きていた兄弟の巻脚絆が握り締められていた。
「何を考えている二階堂!貴様まで死ぬ気か!」
火の中へ戻ろうとする二階堂を数人がかりで取り押さえる兵士達。邪魔をする兵士らから逃れようと、二階堂は必死にもがき、声を荒げた。
「…っ触るな!お前らに俺たちの何がわかる!洋平が死ぬわけないだろう!なあ、洋平!」
いつもの癖で二階堂は自分の隣に顔を向けたが、そこに見慣れた姿はなく。錯乱したかのように見えるその行動に、苛立った兵士らから
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