心願君追「温苑をここに留めさせます」
その一言に誰もが表情を曇らせたが、そこにある命に何の罪もないのは明白だった。
あの日、普通なら動けないはずの傷を負っていた藍忘機が、燃え盛る乱葬崗から連れて帰ったたったひとつの命。病を患い高熱にうなされていた子供を甲斐甲斐しく世話する傷だらけの青年に、もはやこれ以上罰を与えようなどとは誰一人思わなかった。藍忘機はあの地獄に自ら赴き、愛する者の最期を見ることはおろか、その魂魄のひとかけらにすら逢うことができず帰ってきたのだ。それはもう、この世の全てから罰を受けたようなものだと、姑蘇藍氏の誰もが思っていたのである。
「もうこの子が温氏を名乗ることは許されない。忘機、育てるのであれば名前を付けなさい」
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