赦し俺の中には後悔しかなかった。
選択の後悔、行動の後悔、あの時の後悔
重く自分にのしかかりあの時にこうしていれば、ああしていればとずうっと俺を責めたてる。たらればなのは分かっている、でも あの時自分の選択を貫いていたら、言いつけを守らずお傍にいたら、怒られてもいい軽蔑されてもいい、ああなる前に一緒に逃げ出していたら。ファウスト様は心に傷を負うことも怪我を負うこともなかった、仕える者として俺は何も出来なかった。
「レノックス」
「はい」
「そう固くなるな、明日は良い日になる」
星が瞬く夜空の下、優しくそれでいて誇らしげに笑っていたファウスト様を今でも思い出す。そしてその後刑に処されるファウスト様に何も出来なかった自分の無力さに打ちひしがれ死にたくなるのだ。
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