ゆめのかよいじゆめのかよいじ
「失礼のないようにな、史朗。年が近いのだから、おまえがご子息のお相手をだな」
「わかったよ……」
正直なところ、あまり気乗りはしない。父もそれは察しているだろうが。
何しろ、五歳も年下の、それも代議士の長男になど、何を話せば良いものか全く見当もつかない。それでもやらねばならないのが辛いところだ。などと十六のおれは思っていた。
正月から地元の有力者に挨拶することになったのは、なんでも、後ろ盾が必要だからだそうだ。それはおれがではなく、相手にとってもであるという。かなり良い取引になるのだそうだが……。
「すごい家だな……」
工場と同じくらい面積があるのではないかと思われるほどとにかく広いお屋敷の門にたどり着いた。
1991