1st(初めに読む物語)***
「またか」
目覚めてまず初めにやることは、着替えだ。
顔をしかめながらとぼけた様子のアヒル面をはずし、ヒラヒラした薄い水色のケープを半ば乱暴に脱ぐ。
眠りから覚めると決まってこの格好をしている。
気味の悪さを通り越して心底ウンザリする。
長身の青年はブツブツと文句を呟きながら、真っ赤な狐の面と黒いシンプルなケープを身につける。
袴のような服と黒いブーツはまあ、悪くはない。
納得のいく格好に落ち着くと、振り返っていくつかある石のゲートを一つ一つ順番に見やる。
そこは広い海にぽつんと浮かぶ、小さな島だった。
数分もあれば外周を歩いて一周できてしまうほどの大きさで、島の外に見えるのは空と水平線と巨大な雲。
平坦で短い草に覆われた島の縁に並び立つのは、四角く切り出した石を積み上げて作られた簡素なゲート。
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