燈今日の波は高く、燈がなければのまれてしまいそうなほど黒い。右から左から聞こえるざんざんと岩を喰らう音も私の恐怖を煽る。
そんな闇を照らす白い塔の足元に佇む影にようやく辿り着いた。
「足摺様!」
恐怖と波の音に掻き消されてしまわないように少し声を張って、その名前を呼ぶ。
私の呼び掛けに振り返られた足摺様はその闇の中にあっても柔らかに微笑み、困ったように眉を下げて目を伏せた。
「…見つかってしまいましたね…」
答える足摺様の声は静かでも、私のものよりもはっきりと耳まで届く芯がある。それにほっと胸を撫で下ろして、すぐそばまで駆け寄った。先程までよりよっぽど海に近いのに、のまれてしまいそうな不安は不思議と小さくなっている。
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