冬の乾燥した空気が開けたベランダの扉から入ってきた。鋭く刺すような冷気に「さっぶ!」と声を上げた拓也が、並んだベランダ用のサンダルへと足をさしいれる。
すぐに閉めようと手をかけた扉は、輝ニによって阻止された。
「うっわ…寒いな…」
「え、なに…輝ニも出るの?」
日も落ちて、拍車がかかった寒空の下わざわざベランダへ出た理由は拓也の手元にある。握られた長方形の箱とターボ式ライター。換気扇の下で吸えば?と声をかけられるが、拓也は頑なに外へと出たがった。喫煙者でもない輝ニがそのニオイに慣れたとしても、2人の部屋でニオイが少しでも残ってしまう事に拓也は申し訳無さを感じるからだ。確いう輝ニは、確かにいい気持ちはしないが、ぷかぷか煙を吹かす姿を気に入っているから見ていたいという気持ち込みでの声かけだった。そんな事知る由もない拓也は、今日も今日とて外へと足を運んでいる。
1928